文部科学省・新学習指導要領

社会の変化に対応するため、文部科学省は学習指導要領の改訂をおこないました。新しい指導要領の中で強調されているのは、「生きる力」を育むことです。学習指導要領の見直しがなされる過程では、「国語力の育成」が課題であり、「国語の教育を学校教育の中核にすえる」ことが重要であるとされました。

なお新学習指導要領はPISA*1調査の影響をうけています。したがってそこには、思考力・判断力・表現力等の育成と、言語活動を充実させる必要がうたわれています。学習指導要領の改訂は、公立の中学*2・高校*3のありかたや入試問題の変化をうながし、さらには大学入試や、センター試験見直し*4などの検討がなされるという状況を生んでいます。

*1 PISA(Programme for International Student Assessment)
教育・人材育成は、労働市場や社会・経済と密接に関連しているとして、OECD(経済協力開発機構)が始めた事業。OECDは、日本で言えば高校一年生を対象とした統一の試験問題を作成。問題は、生きるための知識や技能が身についているかどうかの調査を目的として作られており、かつての日本の試験に多かった、単に知識の量を問うものとは違う。OECDは試験の結果をもとに、参加各国に政策提言をしている。
国語の分野では、読解力が重視され、情報の取り出し、解釈・理解、熟考・判断、自分の意見を表現できることが求められている。
*2 公立中高一貫校
2005年に東京都立白鷗高等学校附属中学校が開校したのをはじめとし、現在全国に100校以上の公立中高一貫校がある。今後開校予定の学校もあり、まだまだその数は増え続けている。設立の目的は、中高6年間で計画的・継続的な教育指導を実施することと、高校入試の影響を受けないゆとりある学校生活を実現することとで、いわゆる受験エリートとは一線を画した次代のリーダーを育成することである。
入学者選抜のためにおこなわれる適性検査は、教科横断的な問題が出題され、総合的な学力や、問題解決能力をみることに主眼がおかれている。
*3 公立高校の入試問題
たとえば、千葉県立高校の国語の入試問題は平成20年から変化している。それ以前の平成19年までは国語の配点が50点、そのほかの科目が100点と、国語軽視の傾向が明らかにあらわれていた。だが20年には国語の配点も100点となり、同時に問題の難度が上った。リスニングや作文も取り入れられ、読解をして考えて書かなければならない良問が増えて、50分の試験時間で全部の設問に確実に答えるのは難しい状況となっている。
ちなみに他科目の問題にも同様の変化があり、考えなければ解けない問題が増えて、受験者の平均点と各校の合格最低ラインの点数が、平成20年以降はそれ以前より下がっている。
*4 大学入試改革
政府の教育再生実行会議が、国公立大入試の二次試験から「一点刻みで採点する教科型ペーパー試験」を原則廃除する方向で検討中である。それにともなって、一次試験の大学入試センター試験も現行のかたちでの存続はなくなり、新テストの創設が検討される。新しい入試では、新テストの結果を学力水準の目安としたうえで、面接や論文などによって、人物を重視するということである。今から5年後くらいから、大学入試が大きく変わる可能性がある。
背景には、日本が国際社会で生き残るためには、これまでの入試のありかたに象徴される「知識偏重主義」からの脱却が不可欠であるという意識がある。