全国学力テスト国語の問題

さる4月21日に全国学力テストが実施されました。学力テストの実施と、そのデータの使用法については何かと議論が多く、受験者はまだまだ翻弄されることも多いかもしれません。しかし将来を見据えて実施される学力テストの問題には、以前にはなかったようなタイプのものがあり、時代の必要性に対応していこうという文科省の真摯な姿勢をみることができます。

ここではその学力テストの、国語の問題について考えてみたいと思います。

学力テストの受験対象学年は小学6年生と中学3年生です。それぞれに問題A(知識を問う問題)と問題B(知識を活用できるかをみる問題)があります。そして問題Aと問題Bのいずれにも、特徴的な問題が出されています。そのような問題は近年になって増加してきたものです。

今回の学力テストでは、たとえば中3国語Aの問題にインタビューが取り上げられています。「すし」について調べるために、すし屋の店主にインタビューをしたという設定です。
問題には、事前に準備したとされる質問と、インタビューした際の記録とされるものがあげられており、設問は二つ用意されています。

一つ目の設問は、「(インタビュアーは)どのような意図でこの質問をしたと考えられますか」とあり、質問者の質問の意図を問う問題です。そして、二つ目の設問は、相手の答えと話の流れをふまえて、さらに理解を深めるための質問の仕方を問う問題となっています。インタビューでは、事前に準備している質問をただ機械的にくり出すのではなく、話の中で発展していった内容に臨機応変に対応して、質問をし、テーマを掘り下げていくということが要求されていることを読み取らなければなりません。

このような問題は、受験者の言葉によるコミュニケーション能力を問う問題だと言ってもよいでしょう。対話の相手から適切に情報を引き出し、テーマに対する理解を深めるためには、コミュニケーションにおける一定レベル以上の技術が必要です。そのような技術が身についているかが問われているのです。

くり返しますが、国語科におけるこのような問題を、かつての試験に見出すことはできませんでした。現在、国語科において、このような問題が出題されるということは、コミュニケーションの問題が社会的にも重視されつつあるということだと考えられます。

ところで、例として取り上げた問題には「すし」がテーマのインタビューが出てきました。問題文の中ですし屋の店主は、すしの魅力を「季節を感じられるということですね。」と言っています。食に季節を感じるというのは、日本文化の特徴です。食だけではなく、生活のすべてに季節を感じ、それを楽しむというのは日本文化の大きな特徴の一つです。少しうがった見方かもしれませんが、この問題が「すし」を取り上げたのは、もしかすると、日本文化に対する理解の一助となることを副次的に期待してのことかもしれません。世界で活躍する人材を育てるために、自国の文化の理解と、日本人としてのアイデンティティの確立をうながすという狙いがあったのかもしれないのです。

ことは塾の体験型授業には「和菓子の試食」という定番があります。「すし」と同様に、季節を楽しむ文化の典型的な一例が「和菓子」です。受講者の皆さんには、「和菓子」について学び、身につけたコミュニケーション能力によって、いつの日にか諸外国に日本文化のすばらしさを発信してもらえるとうれしいなあと夢見ております。